不適格建築物と既存不適格建築物について
どちらも現行の法律に適合しない建築物を指しますが、既存不適格建築物は、「不遡及の原則」に基づき、直ちに是正が必要となされない建築物をさします。
ただし、建築基準法施行令に定める軽微なものを除き建築行為をすることにより現行法規に適合させる義務が生じます。
ここで重要なのが、適合しなくなった時期(「基準時」といいます)に現に存する(既に建ってる)または、(建築途中で)工事中であることが必要です。
さらに基準時に不適格になっていることも必要です。基準時に不適格でなく適格で、基準時以降に不適格になったものは、既存不適格とはいえません。
当然ながら基準時に不適格であるが、従前から既に不適格(違反)であったものは救済されません。(既存不適格ではありません)
20年12月1日一部加筆
確認申請の提出先について
従前は都道府県をはじめとする行政庁にしか出せなかった確認申請ですが、平成11年に法改正され、国等から指定を受けた確認検査機関(以下、『指定機関』という。)も確認処分や検査済証の交付ができるようになりました。
地域にもよりますが、現在出される確認申請のほとんどが指定機関で審査、検査されています。
行政庁か指定機関のいずれを選択するかは、基本的には建築主の意向ではなく会社や設計者の意向によって決められていると思われます。
法解釈は、多少なりとも行政庁や民間機関においてばらつきがあることは事実です。どちらにも同じ内容を相談をしてみると行政庁の方が厳しい答えがかえってきたと設計者に言われた事があります。
一概には言えないと思いますが…
どちらに出すのが正解とは、一概に言えないとは思いますが、審査のスピードやコスト面で指定機関が重宝されているようです。
ここで注意を要するのが、確認処分は取り消される可能性があるということです。建築審査会という第3者機関の裁決により取り消される場合や行政庁が法律に適合しないと判断して取り消す場合の二つです。
取り消された場合にどうするのかというと、対処可能であれば計画変更の手続きを経て計画の見直しという方法がありますが、対処不能で建築中止に追い込まれた事例もあります。
補足ですが、検査済証は裁判例等から取り消されないと解されてます。
建築物の床面積について
普段の生活ではあまり関係ないですが、建築物を建築(新築や増築など)する際に、敷地に対してのボリューム規制があり、面積の取り方が重要になります。
基本的には上部に屋根があり、当該床部分に屋内的用途がある場合(中にはデットスペースでも算入という考え方もあります)に面積算入されますが、外気に開放された廊下や屋外階段、バルコニーなどは不算入となります。
外気に開放されていると見るためには隣地境界線等までの離隔距離や開放率(一般的には2分の1)といった制約があったり、抜けるのは最大2mまでと細かい計算を要することもしばしばあります。
そもそも共同住宅などには床面積として算定するが容積算定上は不算入といった緩和措置もあります。その他、住宅等の地階や備蓄倉庫など多くの容積算定不算入(条件あり)があります。
補足として、過去を遡ると昭和61年に建設省(いまの国土交通省)から解説がでており、さらに遡ると昭和55年に東京都からも解説が出ています。内容としてはほとんど同じですが、多少異なるところもあります。(正確には建築士連合会や建築士事務所協会による出版)
さらに遡ると、昭和32年、昭和39年に建設省からの例規があります。
21年3月一部加筆
建築物の用途変更について
建築物の用途を特殊建築物に変える上で、変える面積が200を超える場合は、原則として確認申請という手続きが必要になります(従前は100)。
中にはその手続きを経ずに用途変更をしていて、今度また別の用途に変更したいと相談を受けることがあります。遡って手続きを経ることができないので、手続き違反という事実が残りつつ、確認申請を出す必要があると思います。
また、用途変更には準用規定と、新たな用途にかかってくる規定がありますが、(規模が小さく)確認申請という手続きを経ずに用途変更を行う場合であっても、法律への適合義務は無くならないため、それらの規定に適合しているか、建築士さんにしっかりみてもらうことをお勧めします。